平安時代は794年の平安京遷都に始まり、1192年の鎌倉幕府開幕までの約400年間という長い時代です。
江戸時代の約250年と比較すれば、どれだけ長いかは歴然としているでしょう。
そればかりではありません。
平安時代は、天皇、上皇、貴族、そして武士と様々なバックグラウンドの異なる政治主体が、それぞれ独特の政治を展開したため、1つの時代としてまとめて学習することは困難です。
時代の長さと政治の多様性が、平安時代の学習を難しくさせる根源なのです。
そこで勉強の対象を明確にするため、平安時代を4つに区分します。
Ⅰ平安時代初期
・平安京遷都(794)~嵯峨上皇没(842)
Ⅱ藤原氏の時代
・承和の変(842)~後三条天皇即位(1068)
Ⅲ天皇親政から院政へ
・後三条天皇即位(1068)~鹿ケ谷の陰謀(1177)
Ⅳ平氏政権と源平の興亡
・鹿ケ谷の陰謀(1177)~鎌倉開幕(1192)
この区分に従い、平安時代が4つの全く異なる時代から構成されることを認識することこそ、平安時代の勉強の第一歩といえるでしょう。
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目次
平安時代は日本史の学習のカギになる
日本史学習において難関の1つである平安時代ですが、この400年を征服できれば、日本史でもう怖いものはありません。
もうこれ以上、複雑な時代は出てきません。
平安時代の多種多様な政治体制をマスターすることは、日本史学習の方法論の習得につながるからです。
摂関政治を例にとりましょう。
藤原氏が政治を動かした時代です。
ここを学習するポイントは歴代の藤原氏が、何をしたかということです。
例えば藤原良房は他の一族を追放し、藤原氏独裁の基礎を作りました。
藤原氏の代表者を追っていくことで、摂関政治の時代を分析的にとらえることができるようになるのです。
このような観点は、明治時代以降において歴代の内閣が何をしたかという最重点学習項目の勉強の仕方を習得する上でも非常に役に立ちます。
こうして平安時代を攻略すれば、日本史を学習するためのセンスを習得することもできるのです。
日本史を勉強する上でのエッセンスが、凝縮されたのが平安時代なのです。
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平安時代は政治史から取りかかるべし
ひと口に平安時代といっても、政治、経済、文化など様々な要素から成り立っています。
その上、時代が長いだけに、平安の初期と終わりでは全くの変貌を遂げています。
それでは何から手をつけるべきでしょうか?
それは政治史です。
なぜ政治が優先されるのかといえば、政治のあり方が経済や文化のあり方を規定しているからです。
例えば、国風文化が生まれたのはなぜでしょうか?
それは藤原氏の陰謀で中国への追放の危機に陥った菅原道真が、窮地を逃れるため遣唐使の廃止を建議したからです。
これによって中国からの文化の流入が断ち切られ、日本独自の文化が生まれ、発展することになったからです。
国風文化は、もとはといえば、政治的争いから発生したものなのです。
このように政治はその時代の経済や文化を動かします。
経済や文化のあり方まで決めてしまいます。
だからこそ政治史を知らずに、経済史や文化史だけを追うことは全くのナンセンスなのです。
これは他の時代にも通じる歴史の一般法則であります。
政治史を知ることこそ、歴史の勉強の第一歩といえるでしょう。
日本史攻略の糸口は政治史が習得できるか否かにあります。
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平安時代の区分と着目点
最後に上述した時代区分で着目すべき点を述べます。
Ⅰ平安時代初期
・天皇が直接政治を行った
・律令制をいかに維持すべきか、という観点が大事
Ⅱ藤原氏の時代
・藤原氏が政治の中心
・歴代の藤原氏の動きを1人ずつつかむべし
Ⅲ天皇親政から院政へ
・後三条天皇即位(1068)~鹿ケ谷の陰謀(1177)
・政治の中心人物は誰かを追うことが重要
Ⅳ平氏政権と源平の興亡
・鹿ケ谷の陰謀(1177)~鎌倉開幕(1192)
・なぜ平氏が滅んだのかを念頭に置いて学習すべき
入試でよく問われる平安時代のポイント
それでは実際に入試において、どのような箇所がよく問われているのでしょう。
時代区分に従って、指摘します。
Ⅰ平安時代初期
・奈良時代の成立当時の律令制度にどのような変化が加えられたのか。
→令外官、健児など
・藤原氏の中で北家が台頭する過程
Ⅱ藤原氏の時代
・中央の権力者に対する下級貴族の対応
→摂関家と国司の関係
・藤原氏の政治の特徴
Ⅲ天皇親政から院政へ
・天皇や上皇が藤原氏からどのように権力を取り戻したのか
→荘園整理令など荘園関連がよく問われる
・初期の武士の動向
→源氏や平氏はどのようにして力を得たのか理解する
Ⅳ平氏政権と源平の興亡
・平氏が権力を握る過程
→上皇との関係、保元の乱・平治の乱の詳しい理解が必要
・平氏が滅んだ理由
→平氏の貴族化(幕府を開いた源氏との対比が重要)
詳しい平安時代の勉強法 ~実戦編~
時代区分を明確にし、政治史を優先して勉強することは確認しました。
しかし、これだけでは漠然として、まだ具体的な学習の仕方についてつかみきれない人も多いかと思います。
ここからはさらに詳細に有効な平安時代の勉強の方法について述べたいと思います。
①勉強する時代の選択
先に示した時代区分
Ⅰ平安時代初期
・平安京遷都(794)~嵯峨上皇没(842)
Ⅱ藤原氏の時代
・承和の変(842)~後三条天皇即位(1068)
Ⅲ天皇親政から院政へ
・後三条天皇即位(1068)~鹿ケ谷の陰謀(1177)
Ⅳ平氏政権と源平の興亡
・鹿ケ谷の陰謀(1177)~鎌倉開幕(1192)
これに従い、まず、自分が勉強したい時代を選択します。
初めは、奇妙に思われるかもしれません。
歴史の勉強と言うと、古い時代から順に勉強していくのが当然と考えられているからです。
しかし、複雑な平安時代の構造を理解するには、自分の興味のある時代から学習を始めていく方が、嫌になりませんし、より能動的に知識を吸収することができます。
②通読
勉強する時代を選択したら、まずはその時代の大まかな流れをつかむ作業に入ります。
教科書を読んでもいいですし、
「金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本」(東進ブックス)
「石川晶康 日本史B講義の実況中継」(語学春秋社)
も非常にわかりやすいので、特に日本史が苦手な人は、こうした参考書を利用するのもよいです。
最初の学習段階で気をつけるべきことは、
・その時代の政治史を最後まで読み通すこと
・覚えようとしないこと
・何度も繰り返し読むこと
以上の3点です。
1回で覚えようとするのは無理なことですし、そうした勉強は苦痛以外の何物でもありません。
気楽に何度も読み返すうちに自然と歴史の流れが身についているというのが理想的です。
③重要語句を書き出しイメージせよ
このようにして、時代の流れをつかんだら、次は重要と思う語句を書き出してみます。
そしてそれぞれの語句から、それにまつわるエピソードを自分なりに思い出してみてください。
こうすることで、時代の流れを確実に把握することができるようになるとともに、重要事項を選別する歴史的センスを養うことができます。
このような勉強法は、選択問題にせよ、論述問題にせよ、問題を解くための基礎的な力を養います。
④一問一答で征服
教科書または参考書の繰り返しの通読、
重要語句の書き出しとイメージ
この2つの作業が終わったならば次は知識を正確に身に着けていきます。
これには、
「日本史B一問一答【完全版】」(東進ブックス)
「一問一答 日本史Bターゲット4000」(旺文社)
のいずれかが最適です。
こうした一問一答形式の問題集は、入試に必要な知識をくまなく収録しています。
これをしっかり覚えることによって、対象の時代の政治史を征服したことになります。
次は、時代区分に従って、まだ未修得の時代へと移行します。
そしてまた、通し読み、重要語句の書き出しとイメージ、一問一答を繰り返します。
こうすることで、長い平安時代も徐々に身についてくるはずです。
最終的に政治史をすべて攻略したならば、次は社会史、文化史というように勉強の対象を広げていきます。
日本史の平安時代の勉強法まとめ
何度も述べているように平安時代は一筋縄では攻略できません。
歴史の勉強全般について言えることですが、複雑な個所を理解するには、ただ漠然と時代の移り変わりを眺めるのではなく、問題意識を持つことが重要です。
今回の時代区分を念頭に置いた積極的な学習をしてください。
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